hacomono TECH BLOG

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WEB系スタートアップにおけるハードウェア開発プロセス その1

はじめに

こんにちは、hacomonoのIoT部Bizdevグループでリーダーをしているしゅほりんです。

hacomonoはWEB系出自のスタートアップの中では珍しい「ハードウェア内製開発」を行っています。

私自身ハードウェアが主体のメーカーでの事業経験が多いため、hacomonoのようなSaaSを主体とした組織の中でどのようにハードウェアプロダクトを爆速でローンチに持っていくかについては試行錯誤している最中です。

ソフトウェアとハードウェアの融合を謳った「IoT」といった用語は広く行き渡ってきた感触がありますが、その大半を占めるのが「ハードウェアをメインでやってきたメーカーが、その開発プロセスの中にソフトウェア開発を混ぜ込む」という手法だと感じています。

これに対して全く真逆の考え方、つまり「ソフトウェアをメインでやってきた会社が、その開発プロセスの中にハードウェア開発を混ぜ込む」という手法についてご紹介したいと考えています。


なお今回の記事は内容が盛り沢山なので、全5回に分けてお届けしたいと思います。

  • その1:製品ローンチまでの大まかな流れについて(本記事はここ)
  • その2:製品ローンチまでの詳細(1ヶ月目)
  • その3:製品ローンチまでの詳細(2ヶ月目)
  • その4:製品ローンチまでの詳細(3ヶ月目)
  • その5:製品ローンチまでの詳細(4ヶ月目)


ロックワイヤレスについて

今回は「ロックワイヤレス」という自社商品をベースに、hacomonoの製品化プロセスを紹介します。
ロックワイヤレスとは無人運営店舗向けの入退館処理つきスマートロックサービスです。

すでにhacomonoには「ロックQR」というQRコードをかざすことによって動作する入退館サービスがあります。しかしこのサービスは電気錠という少し特殊な鍵を前提としていることから、一般的な扉に適用するには大きな施工が必要になるというデメリットがありました。
そのため、もっとライトに導入したいというお客様に向けて今年の6月にロックワイヤレスというサービスを展開するに至りました。

ロックワイヤレスは「AWS」「スマートロック本体」「Gateway端末」という3つの構成要素から成立しています。

graph LR
    subgraph AWS
        frontend --> Backend
    end
    
    subgraph Edge
        Backend --> Rooter
        Rooter --> Gateway
        Gateway --BLE---> SmartLock
    end

もしロックワイヤレス自体にご興味が湧いてきた方は、以下のプレスリリースを御覧ください! prtimes.jp

ハードウェア開発とソフトウェア開発

製品化プロセスの話をする前に広く一般的な概念で「ハードウェアの開発」と「ソフトウェアの開発(WEBアプリケーションに限る)」の違いをお話しようと思います。
なお開発手法には様々な種類があり、日夜色々なところでアップデートが加えられています。
そのため、ここでの紹介はあくまで広く一般的な定義として捉えて頂きたいです。

ハードウェア開発とソフトウェア開発の対比を以下のように捉えています。

項目 ハードウェア開発 ソフトウェア開発
プロトタイピング 物理的なプロトタイプの製作が必要で高コスト デジタルプロトタイプが容易で低コスト
製造と生産 大量生産の準備が必要 大量生産の概念はない
設計の範囲 主に「エレキ」「メカ」「ファームウェア」の3種類 主に「フロントエンド」「バックエンド」「インフラ」「デザイン」の4種類
バージョン管理 使用するソフトウェアごとにバージョン管理システムが存在 一般的にGit等で一括管理
テスト 物理的な条件下でのテストが一般的 テストプログラムによるテストが一般的
デプロイとアップデート 製品出荷後のアップデートが一部を除き困難 オンラインでのアップデートは比較的容易
エラーの発生要因 設置箇所の温度やネットワーク環境、使用している電源の安定性など複数 一般的にはブラウザの違いとデバイスの違いの2点

特に大きな違いとしては「製造と生産」「デプロイとアップデート」「エラーの発生要因」の3点が挙げられます。
この3点がハードウェア開発プロセスをいわゆる「ウォーターフォール」的にゆっくりとしたものにしていることが多いです。

しかし、hacomonoに期待されている開発速度はあくまで「WEBアプリケーションの開発・改善活動と同じ開発速度」になります。
そのため、ハードウェアの製品化プロセスも通常のやり方とは異なったやり方を模索しなければなりませんでした。


製品化プロセスの大まかな流れ

さて、本題に戻ります。
ロックワイヤレスのようなハードウェアを製品化するには、以下のような観点が必要になります。

  • 要件定義
  • 筐体設計
  • 基板設計
  • ファームウェア設計
  • フロントエンド設計
  • バックエンド設計
  • 品質保証
  • UXの確認
  • 量産体制の構築
  • カスタマーサクセス体制の構築

本記事の目的は、上記のプロセスをできるだけ爆速で進めるメソッドを紹介することにあります。
そのため、1ヶ月ごとにどのようなマイルストーンで進めていくかという目線でタスクを分解します。

【1ヶ月目】

  • 要求定義書の作成
  • カスタマージャーニーマップの作成
  • ユースケースと品質条件の洗い出し
  • 顧客ターゲットと見込み出荷台数の検討
  • 部品選定と検証
  • 必要な認証の調査

【2ヶ月目】

  • OTAアップデートの設計
  • クラウドとデバイスの通信インターフェースの検討
  • ユーザーインターフェース設計
  • 概念実証用のソフトウェアの実装
  • 基板の回路設計
  • 基板のアートワーク
  • 試作基板の実装
  • 筐体のモデル設計

【3ヶ月目】

  • 全体試作の組み上げ
  • 物理環境における実稼働試験
  • デバイスを使ったシステム全体のQA
  • アーリーアダプターへの導入
  • 金型の設計と製造
  • 部品調達と原価計算

【4ヶ月目】

  • ソフトウェアのUX改善
  • 認証の取得
  • サポート体制の構築
  • 在庫管理プロセスの構築
  • 施工管理プロセスの構築
  • パイロット試作の組み上げ

上記のように4ヶ月で正式なプロダクトローンチを目指す計画を立てます。
次の記事からはそれぞれ毎月ごとに行うタスクで「気をつけていたこと」や「捨てるべきタスク」について詳細を記事化していきます。


おわりに

さて、今回はWEB系スタートアップにおけるハードウェア製品化プロセスシリーズの第一弾をお届けしました。
今回は導入の記事になるので、ご興味を持って頂いた方は是非次回以降のより詳細な部分をご覧頂ければ幸いです。

それでは第二回で会いましょう!


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