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半年で62件のAI活用事例が集まった仕組み ― AI推進室が全社週次定例に仕掛けた内容を完全公開


はじめに

hacomono AI推進室 兼 IoT部マネージャーのさとちゃんです。
2025年7月から12月までの半年間、AI推進室を中心に私たちは全社の週次定例で毎週AI活用の事例発表を行う取り組みを実施しました。結果として応募総数62件、全社定例での発表は26件。当初の目標57件に対して達成率109%で着地しました。
この記事では、62件の事例が集まるまでに何をしたのか、どんな事例が生まれたのか、そして半年間で組織がどう変わったのかを書いていきます。「AI活用を推進したいけど定着しない」「エンジニア以外を巻き込めない」と感じている方の何かしらのヒントになればうれしいです。

AI推進室の全体の取り組みは以下のnote記事でまとめていただいたので、よければ見てみてください。

なぜ「全社週次定例でのAI活用事例発表」を始めたのか

2025年、生成AIの波はあらゆる業界に広がっていました。hacomonoでも「AIを活用しないと生き残れない」という経営層の強い危機感のもと、トップダウンで「AIドリブンカンパニーを目指す」方針が打ち出されました。

当時の全社向けCEO資料

AI推進室は2025年7月にCTOと私を含む3名体制で立ち上がった組織です。ミッションは

AI の力を “今” に活かし、未来をつくる

  1. AI を活用した新規プロダクトの開発
    ウェルネス産業向け SaaS の MOAT に繋がる AI-UX を創出し、業界の変革をリードする
  2. 業務効率化と生産性向上の推進
    社内の業務プロセスに AI を積極活用し、効率化と生産性の向上を図る
  3. 全社的な AI リテラシーの向上と文化の醸成
    社員一人ひとりが AI を活用できるよう、支援・推進を行い、AI を組織文化として根付かせる

そのための施策の一つとして選んだのが、全社週次定例の中でAI活用事例を毎週発表してもらう取り組みです。
仕掛けのポイントは2つあります。
1つ目は、全部署を巻き込む目標設計です。目標は全19部署 × 最低3件 = 57件。シンプルですが、これで特定の部署だけの話ではなく「全社の取り組み」として位置づけられました。
2つ目は、インセンティブです。優秀な事例には賞金を用意し、総額100万円の予算を確保しました。経営層がここまで本気だというメッセージは、社内の温度感を変えるのに大きな効果がありました。

運営のリアル ― 62件を集めるまでに何をしたか

募集のためのお願いスライド

賞金も用意。

立ち上げ期:最初の壁

正直、最初はぜんぜん集まりませんでした。
週次定例でアナウンスはしたものの、すぐに応募が来るわけもなく。そこで、はじめは泥臭く社内でAI活用してそうなメンバーに個別に声をかけることにしました。「あの業務、AIで効率化してたやんね〜?(私は大阪なので関西弁)」という具合に、すでにやっている人を見つけて発掘する方法です。過去にやっていた事例もOKとすることで、今から新規に何かを作る必要はないというハードルの低さも伝えました。
それでも発表者が埋まらないときは、私自身が自分のAI活用事例を発表して球数を確保しました。運営がネタ持ってるの、マジで大事です。最初は「待ち」じゃなく「攻め」の姿勢が必要でした。

継続の仕組み:なぜ半年間途切れなかったか

週次定例では主に1回につき1〜2事例の発表を行っていました。別トピックで時間が溢れて物理的に発表できない回もありましたが、基本的に途切れることはありませんでした。
半年間継続できた要因は3つあります。

  • 1つ目は、やはり賞金総額100万円というインセンティブの存在です。具体的なリターンがあることで、忙しい中でも「エントリーしてみよう」という動機が生まれました。
  • 2つ目は、毎週の定例での発表と啓蒙です。「今週もこんな事例がありました」と毎週伝え続けることで、AI活用が特別なことじゃなくて当たり前のことだという空気ができていきました。
  • 3つ目は、熱心な社員の存在です。一部のメンバーが複数の案件をエントリーしてくれたことで、全体を引っ張ってくれました。

結果として、7月〜12月まで毎月10件以上の新規エントリーを維持できました。

選定プロセス:62件から26件をどう選んだか

応募62件のすべてを全社定例で発表するのは時間的に不可能です。そこで、HRの担当者とCTOの3名で隔週のMTGを設け、応募内容を読み込んで発表事例を選定していました。
事例のクオリティには正直ばらつきがありました。高度な自動化パイプラインから「Geminiにこんな質問しながら解決した」というものまで幅広かったです。ただし、事例自体へのフィードバックは行いませんでした。「こう改善してください」と返すと、発表のハードルが上がってしまいます。間口は広く、発表の場で一定のクオリティを保つという設計にしていました。

非エンジニア部門が牽引した ― 部署を超えた巻き込み方

AIアンバサダー制度

全社への浸透で鍵となったのが、AIアンバサダー制度です。各部署のマネージャーにお願いして、AIアンバサダー担当を選定いただき、部署内でのAI活用のリード役を担ってもらいました。
この時、AI推進室はアンバサダーのサポートに回りました。「こういうことをやりたいんだけど、どうすればいい?」という問い合わせに対応する窓口を作って、アンバサダーが困ったときにフォローできる体制にしました。アンバサダーがいることで、部署内での事例発掘や声かけが自然と回るようになった(と思われる...細かいところはアンバサダーに一任)のは大きな成果です。

HR・広報本部が達成率200%を記録した理由

この取り組みで最も印象的だったのは、非技術部門の躍進です。HR・広報本部は目標に対して達成率200%を記録しました。CS部門からは最多エントリーの15件。目標3件に対して500%です。
背景には、部署内に熱心なキーパーソンがいたことが大きいです。ただ、キーパーソン1人に頼りきりだったわけではなく、AIアンバサダー制度が下支えになって部署全体に活用の意識が広がっていったのが大きかったかなと思います。

事例が出にくい部署への向き合い方

一方で、すべての部署から均等に事例が出たわけではありません。所属メンバーが少ない部署や、業務特性上AIの適用が難しい部署もありました。
ここで大事にしていたのは、無理に押し込まないことです。「なぜ出さないのか」と追い込むのではなく、それぞれの業務のペースを大事にしました。この判断が長く続けられる運営につながったと思っています。

集まった事例のハイライト

半年間で集まった62件の中から、代表的な事例をピックアップしました。自社の状況に合わせて取り入れやすいよう、難易度とインパクトも併記しています。まずは低難度・高インパクトの事例から始めるのがおすすめです。

事例テーマ 概要 活用部署 ツール / 技術 難易度 インパクト
商談記録とCRM入力の自動化 通話録音からAIが議事録・要約を自動作成し、CRMフォーマットに整形 セールス・IS Gemini・Gem / 録音ツール 高(事務作業80%削減)
自社ナレッジの対話型検索 社内ドキュメントを読み込ませ、チャット形式で情報検索や壁打ちが可能に CS・全社 NotebookLM 中(検索性・提案力の底上げ)
顧客ミーティングの応対品質チェック 会議録画をAIが分析し、定義済み基準で応対品質を自動採点 CS Meet / GAS 高(2時間→約30秒)
採用プロセスの自動化 人物像の言語化、書類選考の自動判定、候補者ごとの面接質問を生成 人事・法務 Gemini・Gem 高(準備工数60〜70%削減)
給与仕訳データの自動集計 非エンジニアがAIと対話しながらGASで自動化プログラムを自作 経理・人事 Gemini / GAS 高(月次1〜2時間→5分、転記ミスゼロ)
テストケースの自動生成 開発仕様書からテスト観点・ケースを分析・生成 QA Claude Code 高(分析時間を1/6以下に短縮)
社内業務支援ツールの即席開発 データ変換や入力補助の使い捨てツールをAIで数時間で量産 開発・BizDev Cursor 中(現場の不便を即日解消)
セキュリティ要件の自動レビュー コード提出時にセキュリティガイドラインへの適合をAIが自動チェック 開発基盤 Claude Code / CI/CD 高(レビュー漏れ防止)
自然言語からのSQL自動生成 DB構造や社内ルールを学習させ、自然言語からSQLを生成 データ戦略 Cursor / ER図学習 中(抽出時間を1/6に短縮)


半年間で起きた変化 ― 「使う」から「創る」へ

半年間の事例を振り返って最も大きな変化だったのは、ユースケースの質が変わったことです。
取り組みの前半は「AIツールを使ってみた」系の事例が中心でした。Geminiに要約させてみた、Cursorでコードを書いてみた、といった「試してみた」段階です。
それが後半になると、前半に共有された事例をベースにさらに発展させたり、非エンジニアがGASとAIを組み合わせて業務の自動化ツールを自分で作ったりする事例が出てきました。PdMが仕様をインプットして動くモックをサクッと作れるようになったのも印象的です。AIは「便利なツール」から「自分で何かを創るための相棒」へと変わっていきました。
ツール面では、Google WorkspaceやNotionを元々利用していたこともあり、GeminiやNotebookLM、Notion AIは自然に全社の標準ツールとして浸透しました。Cursorについては、Enterpriseプランを導入してセキュリティ面の懸念がなくなったタイミングで、希望者に付与する運用にしました(※今はClaude Codeの方が多い) 。特にGAS × AIの組み合わせは事例が多く、非エンジニアが「自分で作る」ことを後押しする強力な組み合わせでした。
毎週の事例共有を通じて、AI活用が「当たり前」になっていった半年間でした。気づけばみんな自然と息をするようにAIを使うようになっていて、そこが一番大きな変化だったと思います。


まとめ ― 再現するためのポイント

半年間を振り返って、再現するためのポイントを4つにまとめます。

  1. 経営のコミットメント:トップダウンの意思決定と、賞金という具体的なインセンティブ。経営層が本気だと示すことで、全社の動きが変わりました。
  2. 「待ち」じゃなく「攻め」の事例収集:アナウンスして待つだけでは集まりません。個別の声かけ、過去事例の発掘、運営自身の発表。泥臭く動くことが立ち上げ期には不可欠でした。
  3. 誰かに頼りきらない仕組み化:AIアンバサダー制度、週次定例への組み込み、選定プロセスの確立。仕組みとして回るようにしたことで、半年間続けられました。
  4. 無理をしないバランス感:すべての部署に均等な成果を求めるのではなく、それぞれの業務のペースを大事にしたこと。この判断が、取り組み全体を長く続けられた理由だと思います。

2026年、この半年間で作った土台の上で、AIの活用をもっと深めていきます。
正解のテンプレートはありません。ただ、週に1回事例を共有し続けるだけで、組織の空気は確実に変わります。まずは小さく始めてみてください。

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