はじめまして、hacomonoのIoT部に所属するTaroです。
hacomonoはSaaSの提供を生業とする企業ですが、SaaS業界では珍しくIoT機器の製品開発から製造まで行っております。IoT機器を含む電気製品は品質や性能にフォーカスが当たりがちですが、国ごとに制定された法律も切り離すことができません。
私は電気製品に対する認証業務に従事した経験から各国の法規制には詳しく、hacomonoでも電気用品安全法に言及する案件があったため本投稿のきっかけとなりました。
本投稿では、日本における電気製品に対する法律「電気用品安全法」に着目し、これから電気製品を輸入・販売していきたい人向けに何をすればいいのかを解説します。
電気用品安全法とは
「電気用品安全法」(以下、PSE *1)とは、日本国内の消費者が電気用品を安心・安全に利用してもらう為の法律です。経済産業省/METIの管轄となります。
尚、電気用品安全法に違反した場合は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
*1: Product Safety, Electrical Appliances & Materialsの略称
電気用品の安全基準を作るきっかけ
1893年から開催されたシカゴ万博だと言われています。当時、エジソンが発明した電球や電気を使った応用製品が数多く出展され、原因不明の火災が頻発、その原因究明を任されたのがウィリアム・ヘンリー・メリル氏。
同氏は、火災の検証・原因究明を行い、後にUnderwriters Laboratories(UL)を設立しました。
電源ケーブルの評価基準を皮切りに様々な電気用品の評価基準を作り、全世界へ浸透・発展し、日本のPSEへつながっていきます。
PSEの対象・非対象
対象となる電気用品とは
電気用品安全法が対象とする電気用品は、電気用品安全法 第一章 第二条で次のように書かれています。
一 一般用電気工作物等(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第三十八条第一項に規定する一般用電気工作物及び同条第三項に規定する小規模事業用電気工作物をいう。)の部分となり、又はこれに接続して用いられる機械、器具又は材料であつて、政令で定めるもの
二 携帯発電機であつて、政令で定めるもの
三 蓄電池であつて、政令で定めるもの
ん?一般用工作物? 日本人でも難しくてよくわかりませんよね。
一般用電気工作物に接続される機械、用具又は材料と書かれていますが、一般用電気工作物を知らないほうが一般的かと思います(笑)
一般用電気工作物を簡単に説明すると、家庭用電源となるAC100Vのことを言います。
従って、
- 家庭用電源に直接つながる家電、ACアダプタ、電源ケーブルなど
- 携帯発電機(これはそのままの解釈で構いません)
- 蓄電池やモバイルバッテリー
が対象となると思っていただいて構いません。
例えば
- 100Vと繋がらないノートパソコンは対象外ですが、ACアダプタは対象となります。
- 100Vコンセントを有する自動車は、取り外して発電することができないので携帯発電機に該当せず対象外です。
- 蓄電池については、電池単体だけではなく、機器に内蔵され交換を前提としている電池も対象になります。
注意:昔ながらの電源ケーブルを引き出すタイプの掃除機は対象ですが、コードレス掃除機は対象外になります。但し、コードレス掃除機を充電するためのドッキングステーション等が100Vと接続されるので対象となります。
電気用品の分類
○PSE(マル・ピー・エス・イー)、◇PSE(ヒシガタ・ピー・エス・イー又はダイヤモンド・ピー・エス・イー)など見聞きしたことはございますか?
それぞれ以下のように分類されており、これから輸入する製品がどれに該当するか確認が必要です。
- 特定電気用品(116品目):◇PSE
- 電源ケーブル
- ACタップ
- コンセントプラグ など
(特に危険や障害のリスクが高い物は特定電気用品に分類されています)
- 特定以外の電気用品(341品目):○PSE
- 電動ドリルなどの電動工具
- 電球・LED電球など光源や光源を取り付けられる器具
- 冷蔵庫、電子レンジなどの家電 など
機能的に対象になるかどうかグレーなものについては、こちらにまとめられています。
また、リチウムイオン電池やモバイルバッテリーについてはそれぞれ特集が組まれていますのでご参考まで。
注意:1製品に対して1分類とは限りません。例えば、特定電気用品と特定以外の電気用品の2つのマークをつけている製品が存在します。
PSE対象製品を輸入するには何をすればいいのか
対象製品を取り扱う場合、手続きの流れはこちらに書かれています。
以下、それぞれわかりやすく解説します。
販売業の方
届出などの手続きは不要ですが、1つやることがあります。
扱う製品が対象か非対象か理解した上で、対象であれば適切な内容のラベルが貼られているかを確認する必要があります。
製造業又は輸入業の方
基準適合確認及び適合性検査
まず、扱う製品の技術基準が何かを決める必要があります。
技術基準は、こちらに該当するものは全てを満たす必要があります。
一方で製造業ならまだしも、輸入業の方が決めるのはなかなか難しいですよね。
その場合は、現地の製造メーカーに以下を問い合わせてください。
(認証機関等にご相談いただくのもいいと思いますが、認証機関はコンサルティング禁止ですので、形式的なやり取りになることが多いです)
- PSEに準拠しているか
- 試験レポートがあるか(Japan Deviation *2 が含まれていることが重要)
- 特定電気製品の場合は以下を追加してください。
- 適切な試験所で試験をしているか(試験所が限定されています)
- 適合性証明書はあるか(上記の限定された試験所のいずれかが発行したものになります)
注意:特定電気製品の場合、適合性証明書が必要となりますが、有効期限切れを起こしていないかご確認ください。また、試験レポートの内容と適合性証明書の内容が一致しない場合があるので、共有されたファイルをそのまま鵜呑みにしないよう内容に目を通してください。
*2: 試験レポートには様々な種類があり、日本が定める規格とは別に国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission)が定めるIEC規格が存在します。IEC規格を用いた試験レポートには各国の法規制と整合を取るために、指定した国ごとの評価基準を含めることができます。IEC規格を用いて日本向けに評価する場合は、「Japan Deviation」を含める必要があります。
自主検査
自主検査は対象製品の全数に対して実施する必要があります。また、検査記録を検査日から3年間保存しなければなりません。
検査項目及び検査記録に必要な事項はこちらをご確認ください。
注意:自主検査の外部委託は認められています。製造メーカー側に自主検査を委託することで問題ありませんが、輸入事業者に責任が課せられます。
また、適切な絶縁耐力の試験電圧や試験時間は、採用する技術基準により変わってきます。IEC規格で試験レポートの提出を受けた場合は、別表12の技術基準リストからJIS規格と照らし合わし、JIS規格本文からルーチン検査、日常検査などのワードから試験電圧や試験時間を確認してください。
表示
貼り付けするラベルのことを指します。表示項目は以下です。
- PSEマーク(○PSEか◇PSEのいずれか、又は、両方が該当する場合は両方)
- 届出事業者名
- 登録検査機関名称または登録検査機関のマーク(特定電気用品のみ)
- 定格電圧、定格電流等の諸元
詳細はこちらをご確認ください。
注意:ラベルには届出事業者名が必要です。輸入元の製造メーカー名が表示されたままとなるケースもあるようです。国内に輸入する輸入事業者の表示が必要となります。
事業届出
製造事業又は輸入事業の開始日から30日以内に届出を出す必要があります。
届出を行う場所はオンラインで電気用品安全法申請届出システム(保安ネット)、又は管轄の経済産業局になります。
記載事項は以下です。
- 住所
- 氏名
- 事業開始年月日
- 電気用品の区分
- 電気用品の型式の区分
- 製造工場または事業場の所在地
詳細はこちらをご確認ください。
注意:電気用品の型式の区分とは、該当する電気用品の材質や性能を区別するための表です。この表を埋めるためには、製品の詳細仕様を理解する必要があり、製造メーカーと協議が必要です。
特定電気用品については、適合性証明書の次のページに型式の区分が添付されますので、そちらをご確認ください。
最後に
以上が、輸入から販売までに必要なPSEの対応内容です。
電気製品の輸入をやりたいけど、やれないと考えている皆様へ
実際に読んでみて何かしら安心していただけたでしょうか?それとも不安が増してしまったでしょうか。。。少なくとも理解をしていただけましたよね。
- 法律・行政に対する届出が関係するため弁護士や司法書士さんへのご相談が面倒
- 製造元と正しくやりとりをするための知識がない
- 漠然とPSE対応がややこしい
など、PSEを敬遠していたと思いますが、「恐れるに足らずPSE!」と一歩前進していただければ幸いです。
輸入事業者の皆様には、日本人の「安心・安全」だけではなく、新しい技術を国内に持ち込み「快適」の提供にも期待しております。
それでは!
出典: 経済産業省 電気用品安全法
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